書評

【しあわせ節電】鈴木孝夫のものを捨てない!使い切る節約生活84年

ほんの数年前までは断捨離、こんまり、ミニマリストとものを大量に捨てることが善、ものを捨てられないことは悪といった風潮がありました。

しかしここ最近は小さな暮らし、小さなエネルギーで暮らす暮らし、足るを知る暮らしが見直され、ものを最後まで使い切る暮らしにシフトしている人が多くなったと感じます。

これまでの大量に生産して大量に消費する資源を無駄遣いして、一部の人だけが大金を得る資本主義社会にノーをつきつける動きが活発化していると感じます。

マルクスの【資本論】も見直されていますね!

新しいものはなるべく買わずに古いものを大切に使う生活を実践し、その節約生活は84年(本発行当時)という鈴木孝夫氏の著書【しあわせ節電】を紹介します。

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【しあわせ節電】著者鈴木孝夫は慶應義塾大学の名誉教授

【しあわせ節電】は2011年東日本大震災後に関東地方で行われた計画停電を受けて2011年6月に発行されました。

 

現在は絶版で、図書館で借りるか中古本を手に入れて読むことができます。

私は図書館で借りた後大変気に入り、ブックオフオンラインで注文しました。

ブックオフオンライン

1500円以上で送料無料なのでよく利用しています(*^^)v

【しあわせ節電】 鈴木孝夫

2011年6月10日発行

文藝春秋

125p

著者の鈴木孝夫氏は慶應義塾大学の名誉教授です。

専門は言語社会学で著書に【ことばと文化】(岩波新書)、【日本語教のすすめ】(新潮新書)、【鈴木孝夫著作集】(全八巻、岩波書店)などがあります。

節約・節電生活を古くから実践し、節約のもたらす文明論的意義などについて発言しています。

また日本野鳥の会の顧問を務めるなど幅広い活動を行っていて、多くのファンがいます。

2021年(令和3年)2月10日逝去されました。

【しあわせ節電】鈴木孝夫氏が実践していた資源を大切に使う節電術

では実際にどんな節電を行っていたのかを見ていきます。

【しあわせ節電】の本に書かれた節電にまつわるエピソードを抜き出しました。

1.太陽光パネルを設置してゲーム感覚で節電

自宅の屋根に太陽光発電のパネルを設置し、電気を自家発電しています。

ダイヤモンドのような高価な装飾品などを買わずに貯めたお金を使って購入したと語っています。

パネルを設置すると、家の中に現在発電中の電力を表示するモニターが置かれます。

このモニターを見ながら「今日は自給率100%だ」「これだけ消したら、買う電気が減った」とゲームをしている感覚で節電しています。

寝るときにテレビの元スイッチを切ったり、塵も積もれば山となるをモニターとにらめっこしながら実践しています。

2.夜は暗いものだと心得る

昔は夜が暗いことは当たり前でした。

ヨーロッパやアメリカは、わざと部屋を暗く照らしてムードを作っているのに対し、日本はその逆で、夜になってもビルは煌々と照らされ、道では自動販売機が光り輝いています。

本を読みたければ読書灯を付けるなど工夫すれば、全体を照らす必要はないです。

3.自宅以外でもつけたままになっている照明を消して歩く

著者が子供の頃は、トイレの豆電球みたいに小さい電灯を誰が消し忘れたのかを巡って、兄弟中で犯人捜しの大ゲンカになったそうです。

ところが今はどこのオフィスビルでも大学の教室でも、一日中照明がついたままになっています。

それを見つけると一つ一つ消していくのですが、たとえ仕事で行った他の大学の教室でも無駄に電気がついていると消していたそうです。

4.電動の鉛筆削りを使わずに手で削る

鉛筆削りは100円程度の手動の物を愛用しています。

理由は、電動の鉛筆削りだとあっという間に鉛筆の芯をムダに削ってしまうから。

鉛筆を削るのにわざわざ電力を消費するというのがそもそもおかしいことなのです。

人力で簡単にできることをわざわざ電気に頼るのはムダでしかありません。

5.軽井沢の山小屋暮らしでは暖房は薪ストーブを使う

70歳を過ぎてから毎年4月から11月までは軽井沢の山小屋で過ごすようになりました。

山は涼しいので夏は冷房いらずで過ごせます。

暖房は薪が基本で、燃料になる倒木を手押し車や台車を使って拾い集め、それを鋸で切って形を揃え、乾燥させて使えるようにします。

石油・石炭という化石燃料を使うと、環境に負担となる余計な炭酸ガスが発生しますが、薪はごく最近の炭酸ガスが今の木になっていると考え、薪ストーブを使っていました。

薪を燃やした時の炭酸ガスの増加は、わずか100年くらいの間のガスの出入りになるのでそれほど問題ではないからです。

【しあわせ節電】鈴木孝夫氏が実践していたものを捨てない使いきるシンプルな暮らし

本のタイトルは【しあわせ節電】と節電が前に出ていますが、本の性格上、いかにものを大切に使い切るかに焦点を当てた部分が多いと感じます。

むしろこちらがメインなのでは?

見栄を捨て、贅沢な物は欲しがらず、今あるものを修理しながら大切に使う暮らしは大変参考になりました。

【しあわせ節電】でどんなことを実践されてきたのか詳しく書かれています。

1.電化製品は壊れても修理して何十年も使う

使えるものを捨ててまで新しいものが欲しいとは思わない。

他の人のようになりたいという願望がない。

経済的にも差をつけられたとか、羨ましいとかいう気持ちがまったくない。

隣近所と張り合って新製品を買ったり、他人の目を気にしてブランド品を買おうと言う気持ちが起こらない。

こんな風に鈴木孝夫氏は語っています。

山小屋で使っているコーヒーメーカーは60年前にアメリカで買ったもの。

愛用しているスイス製の腕時計は昭和26年に義父からプレゼントされたもので、修理を重ねて長く使っています。

2.親、子、孫と三世代にわたってコートを受け継いで着る

著者の妻が着ていた黒の外套(オーバーコート)は、その母親が1930年代に赴任先のパリで作ったものでした。

それをクリーニングしてしまってあったのを取り出してきて着ていたんですね。

さらにその外套は著者の娘に受け継がれ、3代の女性たちが時代に合わせて着こなし、活用されたそうです。

最近は安価な服が増えてきて、流行が過ぎるとすぐに捨てて買い替えるというのが普通になっていますが、大切に着る、丁寧に保存すればまだまだ着られますよね?

お金や資源の節約になるし、代々受け継がれていく一着の外套に、家族の歴史や物語が詰まっているのです。

3.故人が身につけていたものを形見分けでもらってきて着る

親戚や知人が亡くなると、形見分けで故人が身につけていたものをもらってくるのだそうです。

親しさの度合いに応じてにはなりますが、靴下やワイシャツ、下着、外套、帽子、鞄などをいただき、大切に使っています。

著者が身につけている帽子や上着、ズボンに入っているネームは渡辺や、阿久沢、鈴木とすべて違っていて、もし路上で倒れたらこの人の本当の名前は何だろう?ときっと混乱が生じてしまうとジョークを語っています。

4.捨てられた電気製品を拾って直し学生にあげる

扇風機、ラジオ、洗濯機などを道端で見つけると拾ってきて修理して直していました。

自分で直せないものは、メーカーのサービスセンターに問い合わせて、多少お金をかけても直してもらうようにしていたというのがすごいですね。

ちなみに再生品は学生にあげたり、バザーに出し、お金のない学生(特に外国人留学生)からは喜ばれたそうです。

5.鉛筆は学内で拾う

学校にはやたらと鉛筆が落ちているので、それを拾って使うため、著者は鉛筆を買ったことがないそうです。

忘れ物の鉛筆など誰も取りに来ないから、というのですが、確かに小さなものを大事にしない風潮になって久しいですね。

6.食べ残しが出ないように工夫する

ニンジンなどの野菜の皮は剥かずに食べて捨てる部分を少なくしています。

また、外食をして食べきれないときは、必ずいつも持っている容器に入れて家に持ち帰り食品ロスがでないように心がけます。

犬の餌は、パン屋がパン耳を捨てているのを見かけて交渉し、タダでパンの耳をわけてもらい、犬の餌にして食べさせていました。

食べ残しが出ないようになれば、そもそもたくさんの食料をわざわざ作らなくなるし、海外から余計な物を輸入しなくてすむようになるというのが持論です。

7.貴重な木を使っているのだから一度建てた家には長く住む

アメリカでもヨーロッパでも住んでいるうちに家の価値が上がる場合が多いのに、日本は新しいほど価値があると、まだ使える家屋を解体して更地にしてから売っているのが現状です。

しかし住宅に使えるような木材は、だいたい100年くらいの樹齢がないと使えません。

建て替えの乱発で樹齢100年の木を使った住宅をたった15年で壊すのでは、木がどんどん減る一方です。

ちなみに目黒の著者の自宅は築40年、兄の家は築75年と古い家を大事に長く住んでいます。

地球を救うために道に落ちているごみを拾ってくるのは貴族の楽しみ

著者は自分の持ち物を修理しながら大切に使うのはもちろん、他人が捨てたごみを拾ってきてそれを自費をかけてでも直し、再生してきました。

それは電化製品や日用品に限らず、犬の散歩のついでに空き缶や雑紙を拾い、無償で回収業者に持ち込んでいたのです。

著者は大学教授であり、著書もたくさんあるので生活には困っていないにもかからわずです。

なにがそうさせていたのでしょうか?

【しあわせ節電】にも書いてあるのですが、それは地球を救うためです。

人間が汚してきた地球を、一人の力でもいいからなんとか救いたいという信念をもって行動していたのです。

他人の出すゴミや不用品を道端から拾ってきて使うこのような生活を何十年も続けているのは、貴族の楽しみだと著者は語っています。

人に強制されないで、自分で高く苦しいハードルをきめて、それを越すことを楽しんでいたのです。

経済的だし環境にも優しいし体のためにもなるのに、なんでみんなしないのかな、かわいそうだなと思っていたそうです。

著者がものを大事にしている背景には、太平洋戦争末期の東京の空襲を経験したこと、そして東日本大震災があると言っています。

一面焼け野原となり、食べ物もろくにない、ちゃんとした着物もない戦争中の体験と、大地震の後インフラが停止し自分の家へ徒歩で向かう人たちの大行列が重なって見えたのです。

あまりにも人間中心で地球環境を容赦なく利用し尽くすことを成長や進歩だとする考えをやめて、地球全体の調和を考えましょうと提言しています。

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まずは自分が今持っているものを最後まで使い切ることを意識してみよう

この本が書かれた時から10年が経過していますし、ごみの回収方法も変わり、勝手に収集所からごみを持ち帰ることは罪に問われる時代になっています。

著者と全く同じような暮らしをするというのはなかなか覚悟がいり、難しいと感じますが、まずは今自分が持っているものを最後まで使い切ることを意識して暮らすことはできます。

例えば今使っている電化製品が壊れても、すぐに新しいものに買い替えるのではなく修理して使う。

今持っている家具を他の用途でも使えないか考えてみる。

飽きたからと服を捨てるのではなく、くたくたになるまで着たり、他のものにリメイクして使う。

身内や友人で不要なものを物々交換する。

自分ではもう使わないものも捨てずにメルカリやジモティー、リサイクルショップを利用して他人に譲る。

捨てる前に、もう一度何かに使えないかな?と考えてみる。

【最後まで使いきる】を意識するだけでも、ものの増量を抑えられるし、使うお金が減って節約・貯金にもつながります。

私自身も断捨離、こんまり、ミニマリストにハマっていた時期は、どれだけたくさんのまだまだ使えるものを捨てたかわかりません。

今思えば、資源もお金も無駄にしてもったいないことをしたなと後悔するものもあります。

ものを最後まで使い切ることを意識するだけでも、家の中のものが増えないことにつながりますね。

エコ、サスティナブル、スローファッションなど時代も「資源を大切にゆっくり使う」にシフトしてきました。

他の生物との共存はもちろん、人間自身が滅びないためにも、資源を大切に使っていく必要性を感じます。

鈴木孝夫氏の著書「人にはどれだけの物が必要か」は、ものを大切に最後まで使うことでミニマムに暮らす方法を提案しています。

この本も良書で参考になる部分が多々ありますので、著者の生活ぶりに関心を持たれた方は一読をおすすめします。

 

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ABOUT ME
つばき
つばき
子供二人を持つ40代主婦です。 ゆるミニマリスト。 読書とハロプロをこよなく愛しています。