図書館で【地球家族】という写真集を借りました。
世界30か国のふつうの暮らしを、一家の持ち物で読者に視覚的に訴える本です。
これを読んで日本がいかに物欲主義なのかを痛感しました。
【地球家族】本の基礎データ
「地球家族 世界30か国のふつうの暮らし」
マテリアルワールド・プロジェクト 代表ピーター・メンツェル著
TOTO出版
1994年11月10日初版発行
ISBN 4-88706-105-6
再販されるようになり、現在はAmazonや楽天ブックスで購入できます。
各国の中流家庭に取材交渉し、持ち物を全部外に出して、家族と住居と一緒に撮影した写真が載っています。
国連の資料専門部と世界銀行の協力により、居住地(都市、農村、郊外)、住居のタイプ、家族の規模、年収、職業、宗教などから各国における中流家庭を決定しました。
取材にあたって土地の名士と一緒に近所を訪ねてまわり、集合写真の撮影にふさわしいロケーションを備えた家族を探し出すのですが、所有物を外に出して世界の人の目にさらすことを説得することが難しかったそうです。
でもそのおかげで、各国の住居、家族、所有物、1日の過ごし方がたった1枚の写真からありありと伝わり、読者が己を顧みる素晴らしい作品になっています。
撮影時期は1993年で撮影から30年近くたっているため、各国の事情も変わっていると思いますが、それでも見る価値が大いにあると思いました。
テレビでも紹介されたことがあるみたいです。
私はTwitterで紹介されていて知りました。
本日紹介する本は「地球家族(TOTO出版)」です。世界中の家族に「家の中にあるものを全部、家の前に出して写真を撮らせて下さい」とお願いして実現したのがこの写真集。それぞれの「普通の暮らし」を見て抱く親近感や新鮮な驚きは自分の暮らしをも新しい視点で見つめなおすきっかけになってくれる筈♪ pic.twitter.com/OuxSD13kPI
— 八戸市 木村書店@サイン本注文受付中 (@kimurasyotenn1) August 23, 2020
一番原始的でものが少ないのはマリの家族
まず紹介されているのが、マリの家族写真です。
本の表紙にもなっている家族です。
住居は乾いた土で作られ、その屋上スペースに二家族が座っています。
マリは一夫多妻制のため、第一夫人の家族と第二夫人の家族が一緒に食事をしているのです。
家族は全員で11人。
そのうち子供は8人です。
所有物は、大まかに分けて以下の通りです。
蚊帳、ベッド
割れたかめ、うすやきね、ふるい
椅子3脚
ラジカセ(電池式)
洗いおけ5、なべ、ひしゃく、水筒、やかん、じょうろ、陶器のつぼ
バスケット、ブリキのバケツ
農具、魚網
物干し、衣類
マンゴーの木30
米袋
たきぎの山
木製の臼と杵、木製のカラトリー、土で作ったつぼ、ブリキのバケツ、木の枝で作った物干し竿とまるで日本の縄文時代のような暮らしです。
所有物は料理に使うもの、衣類、寝るためのベッド、食べ物を保存しておく壺だけど、本当に必要最低限。
家電製品は電池式のラジカセだけで、冷蔵庫、電子レンジ、エアコン、テレビといったものはありません。
移動手段になる自転車、バイク、車もないし、荷物を運ぶような荷車さえありません。
それでも写真に写る家族は皆笑顔です。
一番物が少ないのはインドの家族
一番物が少なくすっきりと暮らしているのはインドの家族です。
写真はphotoACさんのフリー素材よりインドの街並み
夫婦二人と子供4人で暮らしているヤデブさんの所有物は以下の通り。
ベッド
ヒンドゥーの神の絵2
金属のポット7
金属グラス2
金属のトレイ4
焼き物のつぼ2
ざる(米入れ)
米袋3(昨年収穫したもの)
木の椅子とスパイス入れ3
金属の箱(書類、絵、貴重品)
はしご
木の重り4(レスリングの道具)
マキ
壊れた自転車
ヒンドゥー教のポスター
毛布
ベッドと毛布3
以上です。
これが持っているものすべて。
衣類も靴もかばんもありません。
電化製品はもちろんですが、洗剤やせっけん、タオルといった衛生用品も見当たりません。
私たち日本人からしたらこんな生活はホームレスのようで耐え難いと思いますが、ヤデブさんはインタビューでこのように語っています。
ヤデブ一家はたくわえもなく、その日暮らしをしている。ひどいときは2週間も、ほとんど食べずに暮らすこともある。「神様の御心のままに」とバシャウ(夫)は言う。「われわれにできることは何もない」と言う。だが、バシャウは、今の生活は自分の家があるだけ、親たちの生活よりましだし、それで十分だとも言うのだ。
家があるだけまし。
忘れてはいけないのが、この本に登場している家族はその国では中流家庭だということです。
つまりこの家族よりもひどい暮らしをしている家族がたくさんいる。
雨風しのげる家があるだけまし。
そう考えると私たち日本人はなんて恵まれているんでしょう。
日本人が世界で一番ものを持っていて統一性がない
30か国の最後に登場するのが日本人です。
小さな家の前に運び出された大型家具が並び、二段ベッド、食器棚、ドレッサー、学習机、電子ピアノが並んでいます。
洗濯機、乾燥機、テレビ、トースター、電子レンジ、冷蔵庫、テレビゲーム、電気ポット、炊飯ジャーが見えます。
夫婦二人と子供二人の家族に犬も一匹います。
スーツ、着物、ワンピース、子供服といった衣類が並び、靴は4人家族で28足、ローラースケートもあります。
自転車だけで3台、他にも一輪車、スケートボード、車もあります。
ヨーロッパやアメリカなどの国々のような統一されたインテリアではありません。
木製家具もあれば、カラフルなカラーボックス、昭和を感じる緑色の収納棚、こたつ、赤べこなどの民芸品、プラスチック製のかご、こたつ等、欧米文化と日本文化がごちゃまぜになっています。
世界各国の写真を見てきて最後に日本の写真を見た時、なんてものがたくさんあって統一感のないごちゃごちゃした家なんだろうと思いました。
日本人の家族が撮影されたのは1992年なので、100円ショップやファストファッションが席巻している現代ならもっとたくさんものがありそうですね。
ものがなくても外国人の家族写真はみんなが肩を寄せ合って笑顔がまぶしいのですが、日本人家族はこたつに夫と妻が向かい合わせに座り、子ども一人は妻の膝の上に、もう一人は学習机の椅子にと家族間の距離も気になりました。
物が多すぎて、とてもマリやインドの家族のように荷物を羅列できません。
昭和はアメリカの大量消費を真似してきた日本。
その集大成が日本の物も欧米の物も手に入るものは手に入れてきたこの家なのかもしれませんね。
家族写真の次のページに各家族の生活スタイル、スケジュールといったインタビューも乗っているのですが、日本人家族はツッコミどころ満載。
家族よりも1時間半早く起きて、夫や子供を起こし食事の用意や子供の世話などいくつものことを同時進行でこなしていく妻のサヨ。
朝はギリギリまで寝ていてペプシ2杯、タバコ2本、コーヒー一杯、ビタミン剤という朝食を済まし、テレビで時刻を確認し、7時28分きっかりに家を出て、1時間半という通勤時間をかけて会社に行く夫のカズオ。
カズオは仕事帰りにスナックにより酒を飲みながらカラオケを楽しむ。
一方のサヨは子供二人を連れて歯医者へ。
歯医者の診療はびっくりの2分!
子どものミオは週4,5回スイミングに通い、その後は近所の塾に行って勉強と日本の子供は忙しそう。
いやいや、カズオなにしてんねん!
サヨにまかせきりにしないで早く家に帰りなさい(>_<)
30年前の家族の風景ですが、あんまり今の日本と変わっていないような。
外国人から見ても、日本人家族のおかしさというか、空虚な感じが伝わってきたんでしょうね~。
【地球家族】を読むといかに自分が恵まれているかがわかる
家族の普通の暮らしを写真に撮っただけなのに、こんなに心を打つなんて。
ぜひ多くの人に手に取ってもらいたいですね。
同じ地球に暮らしていても、水をくみにいかないと手に入らない家族がいる、靴をはかない家族がいる、襲撃された家族がいる、学校に通えない家族がいる、育児と家事が忙しくて働けない家族がいる。
いろんな家族がいます。
日本人はあれがない、これがない、周りの人はみんな持っているのに自分だけ持っていないと持っていないものに目を向けています。
けれど、今あるものに目を向ければそれほど多くのものは必要ないと思います。
生きていくのに必要最低限の衣類、電化製品、食器、家具はほとんどの人がもうすでに持っています。
あなたが今欲しいと思っているものは、誰か有名人が宣伝しているから欲しくなったものではありませんか?
みんなが持っているから持ちたいものではありませんか?
今持っているものが気に入らなくて新製品が出たから欲しいという気になっているものではありませんか?
これを持っていたら人から良く見られるという見栄の商品ではありませんか?
欲しい物じゃなく必要な物を買うようにすれば、ものも増えないし節約にもなります。
私も今一度、自分がすでに持っているものを見直して、「私はこんなに持っている。十分もっている。恵まれている」と持っていることに目を向けて感謝しようと思いました。
ぜひ現代版の【地球家族】も見たいです!
改訂版が出版されるといいな。